炭とワイン ときどき 俳句

風鈴

2023年8月26日

昔から日本人は夏を少しでも涼しく過ごそうと工夫をしてきました。その一つが風鈴でしょう。風鈴の起源は日本ではなく、中国ともインドとも言われています。もとは竹林に吊り下げて、音の鳴り方によって物事の吉兆を占う「占風鐸」という道具でした。これが仏教と同時に日本に入り寺院に吊される「風鐸」となりました。風鐸には魔除けの意味があり、その音の聞こえる範囲に住む人々には災いが起こらないと信じられていました。
江戸時代までには夏に涼しさを感じるための道具となり、浮世絵にも描かれています。屋台に風鈴を吊るして蕎麦を売り歩く「風鈴蕎麦」が流行ったとか。風鈴はすでに庶民のものですね。そういえば昭和30年代の東京の下町には、屋台に風鈴を吊るして「きんぎょ~、え~、きんぎょ」と売り歩く金魚屋さんがいましたよ。その独特の売り声と硝子の風鈴の涼やかな音は、子供時代の夏の思い出です。風鈴の素材もいろいろですが、紀州備長炭で作った変わり種の風鈴があります。紀州備長炭は硬度が高いので、揺れると澄んだ高音を奏でます。これがとっても心地いい音。硝子の風鈴とはまた違った趣があります。


風鈴のもつるるほどに涼しけれ    中村汀女